2026.1.10

丸井庵流触診秘術について

 鍼灸治療又は施術(せじゅつ)にとって、触診(しょくしん)「秘術」は、最も大切な基本です。単に指先で触るという行為を超えた、「身体の微細な情報の言語化と、それに基づいた予測能力」と理解するのが近道です。
 かつての達人たちが「秘術」として隠した技術の正体は、現代医学的な視点で見ると以下の3つのステップで紐解くことができます。

1. 「皮膚の履歴」を読み取る力
手は、皮膚の表面だけでなく、その数ミリ、数センチ下の組織の状態を階層的に捉えています。
• 温度差(熱と冷え): 炎症による熱感だけでなく、血流不足による「芯の冷え」を感じ取ります。
• 弾力と抵抗: 正常な筋肉の弾力に対し、コリや癒着(ゆちゃく)がある場所は「硬い結び目」や「砂のようなざらつき」として指先に感じます。
• 湿り気と乾燥: 自律神経の乱れは、皮膚の異常な湿り気や、カサカサした乾燥となって現れます。


2. 「反射」のメカニズム
掌(しょう)において「お腹を触って足の病気を当てる(腹診)」ような離れ業ができるのは、身体が**「反射(リフレックス)」**という仕組みでつながっているからです。
• 内臓体制反射: 内臓の不調が、特定の皮膚表面や筋肉の硬直(ツボ)として現れる現象です。

• 経絡(けいらく)のネットワーク: 古典的な東洋医学では、全身を巡るエネルギーの通り道として理解されています。我々は、ある一点(ツボ)を触った時の「響き」が、どこまで伝わるかを観察しています。

3. 「対話」としての触診
最高の業は、一方的な検査ではなく、患者の身体との対話です。
• 圧痛(あつう)の変化: 特定の場所を押した際、患者が「痛いけれど気持ちいい」と感じる場所(阿是穴:あぜけつ)を探し当てます。
• 変化の即時性: 鍼を一箇所打った直後、先ほどまで硬かった別の場所がフワッと緩む瞬間を指先で確認します。この「変化の確認」を繰り返すことで、治療の正しさを確信します。

理解するためのポイント: 「情報の解像度」
触診の秘術を理解するコツは、「情報の解像度を上げるトレーニング」だと考えると丸井庵流触診の秘術が理解できます。