手が働く
半世紀前のお話です。
未だ私が、鍼灸師では無かった頃、佐賀県嬉野町に凄い鍼治療の名人がおられました。
急性の腰痛治療では、九州では五指に入ると皆様は評価しておりました。
「私の事を鍼灸師に育てる様」に息子さんに依頼し、老先生はお亡くなりになりました。
当時、医療機器屋の私は、福岡市から時折、老先生を訪ねて居りました。
ある日「自分の手がね、勝手に仕事をする」「思っても無い、治療をする」
と話始めました。「どう言う事」と問うと「手がね、勝手に治療をしてしまう」
老先生の話しを深掘りすると。
この患部はこの程度の治療で良いだろうと、今までの経験や学んだ情報から、治療家としての老先生は考える。
しかし、指先や掌の感覚が勝手にダメだとばかり治療を続ける。
前回は長年治療をすると、手が勝手に治療すると、お話しをして居ました。
今回は,治療の患部と治療の結果にも、手が関わると言われるお話です。

「最近治療が長くなったね」と娘から叱られます。「予約者の方が長く待ちますので、決めた時間内に治療して下さい」との事です。
「そうか? 俺の手、勝手を治療しているのか」とても嬉しくなり、又ある意味面倒になった。「今日は,時間内に治療を済ませる為に」と久しぶりに強目の鍼を握りました。「大丈夫ですか? 痛くないですか?」と聞きながら
もう老鍼灸師です、残り何年、治療をする事が叶うでしょうか?
熟練は、手は手で、掌は掌で、そして脳という感性も勝手に働きます。
熟練技術とは、訓練した患者さん達と我心のコラボが創った術ですね
段々と段々と私が私(心と魂)で乖離して無くなって行く
そして恍惚の中で、老いて行くのでしょう。
